一を聞いて虚数解

枠の外の話

アップセットという意味。

という訳で今週は天皇杯。普段ならここからの3回戦で早くもJ1と当たる2009年。甲府は見事にJ1チームを撃破。これぞ天皇杯の醍醐味アップセット。今のはやりだとジャイアントキリングですか。やはりこれがあるから(選手はつらいかもしれないけど)天皇杯は早々に負けないことに意味はあるなと。一試合多く消化して、きつい日程になった上で負けても、得るものはどこかにあるってのは体験的にあるし、やっぱりプロの選手ならこういうときに他チームがやってるのを指をくわえて見てるのはどうよって、気分になるのかなと。だから勝ちに行く。そして勝ってくれたチームと選手に感謝。

それはともかく、同じ日に山形が明治大学に負けたのですが、それが「史上初のJ1が大学勢に負けた」事だそうで。ああ、栃木の解説ばかりしてるのに越後名乗っちゃう方のセルジオの格好のネタになるんだなとかどうでもいいこと思いつつ。
強さ本物!明大がJ1山形に3―0完勝(サッカー) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース

まあ、甲府はこの山形に順位で負けてJ1昇格逃してるので、そういう意味でもっとがんばれや的な言い方もしたいし、そもそも誰にも望まれぬ言い訳でしかないのは重々承知ですし。さらにいうと明治大学の歴史的勝利にけち付ける気もなけりゃ、むしろ素直におめでとうといいたいですし、そもそもこの論理はかなり破綻した論理なのかもしれませんが。(これくらい前置きしておかないと)

それとは全く別の方向からちょっと思った。そもそもこれはアップセットだったのか。ジャイアントキリングだったのか。と。

アップセットって「格上が格下に負ける」訳ですが、この場合の格ってのがどこまでをさして格なのか。当然J1という国内トップディヴィジョンと関東大学リーグ1部なので、国内トップのJ1にいる山形の方が格上でもちろんいいのですが、それ以外の部分ではどうなのか。

すごく平たくいえば、大学と地方のこれくらいの規模のクラブチームってどっちの方がサッカー環境として恵まれているのか。選手層として厚いのか、有望な選手が集まるのか、指導者がそろうのか。運営面でのノイズとか、資金面とか。もろもろで。そういう意味で格上ってなんだろうと。

大学には当然大学生の年代しか集まらない。その点で年齢無制限のクラブチームには負けるんだけど、裏を返すと、その年代においての選手の質はどうなのか。今(とこれまで)はこの規模のクラブと関東の有力大学のどっちのオファーの方が魅力的か。お金という意味でなく、リスキーさとか、ステップアップ的にとかもろもろ。まして、サッカー文化同様選手育成もちょっとづつ発展させてる現状で。同様のことは指導者にも言えるので、総合的に見た人材の部分で考えられる。

環境にしても同様で、山形みたいに冬場雪で埋まるってのを差し引いても、練習環境で関東大学リーグ所属大学に勝てるクラブはどれだけあるのか。生活環境、そのたもろもろ。下手したらその地域でサッカーをやる意義すら問われかねないクラブもなきにしもあらずんばなこのご時世もちらほらな状況で。

もちろんすべてのところが裕福だとは思わないし(今回の明治大学だってつい最近ようやくまともな環境を手にしたということで。サッカーってジャンル自体日本ではこれからでしかないのは多少はわかっているつもりです。)それだけで何か言い訳になるのかといえば、プロリーグ所属である以上、J1だろうがJ2だろうが言い訳になる訳がない。

が、ですが、それをわかっていてもなお、日本のサッカーには多かれ少なかれ、そういう格というかチームでなくサッカークラブとして、運営母体としての逆転現象的な面があるのではと思います。(もしかしたら世界でも同様のことはあるのかもしれないけど)近年の大卒選手の台頭がすごいってのがある程度裏付けてるのかなと。

何度も念を押すようにいえば、それが何か意味を持つ訳でないし、負けた山形にとってはどんな状況であれクラブ史に残らざるを得ない一戦になった訳ですし、明治大学は歴史の扉をこじ開けたのは確かなんです。そこにはなんの揺らぎもない。ピッチでの戦いに外の要素は言い訳でしかないし、これは言い訳にもならない。

だけど、その影にちょっとだけ今の日本のサッカーの縮図を垣間見たような。そこだけで叩かれるのも短絡的というか、日本サッカーとかいいだして考えるならどこまで見ていくのが必要なんだろうなとか。思うところがいろいろあった一戦でした。(それにしても傍から見ても完敗ですが…)

いや、それでもFootball is going onなんですけどね。自分のところのクラブが一番悲惨だなんて思う奴にはなりたくない。と思う、思いたい。思い続けたい。それでも…まあ、とにかくそこら辺とか、それより大変なクラブや、そこを目指すような物好きといわれる皆様には本当に頭が下がる思いです。

そういう意味で、やっぱり負けなかったことは良かった。(あの時負けたらこういう発想が浮かばなかっただろうし、浮かんでも書けなかったろうし)